初めての自由旅行に選んだのはタイだった。
「微笑みの国」タイランド。
そんなキャッチフレーズに惹かれたのかもしれない。
だが微笑みの国だろうが大笑いの国だろうが、
頼りになるのが自分だけなんて旅は初めてだから、私はもう必死なのである。
バンコクに到着するや否やガイドブックとにらめっこ。
ホテルの予約はとってあるので、とにかくそこまでたどり着かねばならない。
ホテルへの行き方はこう記されている。
『エアポートバスに乗ってプラトゥーナームで降りたら、すぐそこ』
バスには迷わずに乗れた。
プラトゥーナームで降りることもできた。
だがしかし。
「すぐそこ」が分らない。
「すぐそこ」ってどこだよ。
降ろされたのは市場の真ん中。
「すぐそこ」にホテルの姿はない。
仕方がないから、そのへんの人にきいてみた。
「○○ホテルはどこですか?」
「ああ、交差点を渡って左だよ」
左にいってみた。
だが見つからない。
もう一度べつの人にきいてみた。
「そこの角を右だよ」
でも見つからない。
3人目にきいてみた。
「右に曲がってすぐ右手」
もとの交差点に戻ってもうたやん!
途方にくれていたら、親切な人が声をかけてくれた。
「君達、どこにいきたいの?
ぼくはフィリピン人だけど、このへんはちょっと知ってるから、手伝ってあげるよ」
地獄に仏とはこのことだ!
私たちは彼にすがってついて行くことにした。
彼はガイドブックを手に持って歩いていく。
妹がその後ろを、私はさらに後ろをついていく。
てくてく。
てくてく。
・・・「すぐそこ」にしては遠くないか?
疑いがむくむくと頭をもたげたもんだから、さあ大変。
私はまた悪い想像を働かせはじめた。
彼は実は強盗なのかもとか、案内するふりをして襲い掛かってくるのかもとか、まあそんなことだ。
日はとっくに暮れている。
夜のバンコク。
表通りはネオン看板がまぶしいくらいだが、一歩、裏路地に入ると真っ暗闇。
底知れぬ闇。
男の人は闇の中へずんずん歩いていく。
妹もなんの疑問もいだかずについていく。
私は暗がりで、怖くて、一人で立ちすくむ。
「どうしたんだ」
彼が気づいて立ち止まった。
そして私の顔をみて肩をすくめ、
「ここで待ってて」
と、表通りまでひとっ走り。
トゥクトゥクを呼んできた。
「大丈夫だから乗りなさい」
私たち2人はわけもわからぬまま、抵抗もできないままに乗せられた。
トゥクトゥクは風をきって走り出し、すぐに止まった。
「着いたよ。○○ホテルだ」
運転手が言った。
目的地だった。
本当に「すぐそこ」だったのだ。
あの人は悪い人じゃなかった。
ありがとうも言ってなかった。
気づいたのは、部屋について荷物を下ろしてからだった。
良いなの人か、騙そうとしている人なのか。
見分けることは難しい。
今でもさっぱり分らない。
ただ、向こうから声をかけてくる人は、とくに日本語とか流暢な英語で話しかけてくる人は、80%くらいの確率でヤバいような気がする。
あの時はラッキーだったんだろう。
でも疑ってばかりはいられない。
疑ってばかりで・・・彼には悪いことをしたと思う。
「微笑みの国」タイランド。
そんなキャッチフレーズに惹かれたのかもしれない。
だが微笑みの国だろうが大笑いの国だろうが、
頼りになるのが自分だけなんて旅は初めてだから、私はもう必死なのである。
バンコクに到着するや否やガイドブックとにらめっこ。
ホテルの予約はとってあるので、とにかくそこまでたどり着かねばならない。
ホテルへの行き方はこう記されている。
『エアポートバスに乗ってプラトゥーナームで降りたら、すぐそこ』
バスには迷わずに乗れた。
プラトゥーナームで降りることもできた。
だがしかし。
「すぐそこ」が分らない。
「すぐそこ」ってどこだよ。
降ろされたのは市場の真ん中。
「すぐそこ」にホテルの姿はない。
仕方がないから、そのへんの人にきいてみた。
「○○ホテルはどこですか?」
「ああ、交差点を渡って左だよ」
左にいってみた。
だが見つからない。
もう一度べつの人にきいてみた。
「そこの角を右だよ」
でも見つからない。
3人目にきいてみた。
「右に曲がってすぐ右手」
もとの交差点に戻ってもうたやん!
途方にくれていたら、親切な人が声をかけてくれた。
「君達、どこにいきたいの?
ぼくはフィリピン人だけど、このへんはちょっと知ってるから、手伝ってあげるよ」
地獄に仏とはこのことだ!
私たちは彼にすがってついて行くことにした。
彼はガイドブックを手に持って歩いていく。
妹がその後ろを、私はさらに後ろをついていく。
てくてく。
てくてく。
・・・「すぐそこ」にしては遠くないか?
疑いがむくむくと頭をもたげたもんだから、さあ大変。
私はまた悪い想像を働かせはじめた。
彼は実は強盗なのかもとか、案内するふりをして襲い掛かってくるのかもとか、まあそんなことだ。
日はとっくに暮れている。
夜のバンコク。
表通りはネオン看板がまぶしいくらいだが、一歩、裏路地に入ると真っ暗闇。
底知れぬ闇。
男の人は闇の中へずんずん歩いていく。
妹もなんの疑問もいだかずについていく。
私は暗がりで、怖くて、一人で立ちすくむ。
「どうしたんだ」
彼が気づいて立ち止まった。
そして私の顔をみて肩をすくめ、
「ここで待ってて」
と、表通りまでひとっ走り。
トゥクトゥクを呼んできた。
「大丈夫だから乗りなさい」
私たち2人はわけもわからぬまま、抵抗もできないままに乗せられた。
トゥクトゥクは風をきって走り出し、すぐに止まった。
「着いたよ。○○ホテルだ」
運転手が言った。
目的地だった。
本当に「すぐそこ」だったのだ。
あの人は悪い人じゃなかった。
ありがとうも言ってなかった。
気づいたのは、部屋について荷物を下ろしてからだった。
良いなの人か、騙そうとしている人なのか。
見分けることは難しい。
今でもさっぱり分らない。
ただ、向こうから声をかけてくる人は、とくに日本語とか流暢な英語で話しかけてくる人は、80%くらいの確率でヤバいような気がする。
あの時はラッキーだったんだろう。
でも疑ってばかりはいられない。
疑ってばかりで・・・彼には悪いことをしたと思う。

