「ピラミッドの真下まで行きたい」
私とR子と現地ガイドのMちゃんと。
3人がかりで車椅子を押したり持ち上げたりして、ガタガタの地面と格闘した。
時には後輪だけで走らせ、時には段差を越えながら。
U子はますます体を強張らせながら。
必死の思いでたどりついた。
ピラミッドのふもとへ。
夢のピラミッドを目にしても、U子の反応は鈍かった。
身体を強張らせうつむいたまま。
「来たよ!ピラミッド!」
顎を支えてやるとようやくニッコリ微笑んだ。
嬉しくて嬉しくてたまらないのだが、嬉しすぎて現実感がなかったと、
「夢の中にいるみたいで」
とあとで語っていた。
私もなんだかふしぎな気持ちだった。
ピラミッドに来るのは3度目だ。
最初は一人で。
2度目は友達と。
そして3度目は家族と・・・U子と。
母や妹達と、ちっちゃい椿まで一緒になって、ぽかんとピラミッドを見上げている。
シンジラレナイ。
ピラミッドニ来チャッタヨ!

ぼんやりしたまま
「ピラミッドは私達の夢だったんですよ」
と話すと、現地ガイドのMちゃんが、にっこり微笑ってこう言った。
「Dream Come True!」
・・・ドリーム・カム・トゥルー。
この言葉は私には縁遠いものだった。
小説の中か、せいぜいアーティストのグループ名にすぎないと思っていた。
他人のための言葉だった。
その言葉がMちゃんの口から出てきたことで、私はちょっとびっくりしたくらいだ。
「Dream Come True!」
ああ、そうか。
夢が叶ったんだ。
だが感動にうち震えてるヒマはない。
歓声をあげて走りまわる椿を捕まえておくのがたいへんだったからだ。
4才児にとってピラミッドはでっかい「お山」。
広がる砂漠はでっかい公園みたいなもんだ。
「みんなで遊びに来れて嬉しいね!」
うん。
みんなで来れて、嬉しいね。
ちなみに、オーパーツだとか宇宙人が作ったとか、好きなことを言われているピラミッド。
クフ王の玄室では必ずと言っていいほどミステリアスな人々に出会う。
前回私がのぼった時は、祈りを唱えつつつ宇宙人と交信を試みているグループがいた。
今回のぼったR子の話によれば、
「白人のおばちゃんがものすごいエビぞりをしていた」
らしい。
ミステリアスなピラミッド、私達の夢のピラミッドは、オカルトの聖地でもあるのだ。
私とR子と現地ガイドのMちゃんと。
3人がかりで車椅子を押したり持ち上げたりして、ガタガタの地面と格闘した。
時には後輪だけで走らせ、時には段差を越えながら。
U子はますます体を強張らせながら。
必死の思いでたどりついた。
ピラミッドのふもとへ。
夢のピラミッドを目にしても、U子の反応は鈍かった。
身体を強張らせうつむいたまま。
「来たよ!ピラミッド!」
顎を支えてやるとようやくニッコリ微笑んだ。
嬉しくて嬉しくてたまらないのだが、嬉しすぎて現実感がなかったと、
「夢の中にいるみたいで」
とあとで語っていた。
私もなんだかふしぎな気持ちだった。
ピラミッドに来るのは3度目だ。
最初は一人で。
2度目は友達と。
そして3度目は家族と・・・U子と。
母や妹達と、ちっちゃい椿まで一緒になって、ぽかんとピラミッドを見上げている。
シンジラレナイ。
ピラミッドニ来チャッタヨ!

ぼんやりしたまま
「ピラミッドは私達の夢だったんですよ」
と話すと、現地ガイドのMちゃんが、にっこり微笑ってこう言った。
「Dream Come True!」
・・・ドリーム・カム・トゥルー。
この言葉は私には縁遠いものだった。
小説の中か、せいぜいアーティストのグループ名にすぎないと思っていた。
他人のための言葉だった。
その言葉がMちゃんの口から出てきたことで、私はちょっとびっくりしたくらいだ。
「Dream Come True!」
ああ、そうか。
夢が叶ったんだ。
だが感動にうち震えてるヒマはない。
歓声をあげて走りまわる椿を捕まえておくのがたいへんだったからだ。
4才児にとってピラミッドはでっかい「お山」。
広がる砂漠はでっかい公園みたいなもんだ。
「みんなで遊びに来れて嬉しいね!」
うん。
みんなで来れて、嬉しいね。
ちなみに、オーパーツだとか宇宙人が作ったとか、好きなことを言われているピラミッド。
クフ王の玄室では必ずと言っていいほどミステリアスな人々に出会う。
前回私がのぼった時は、祈りを唱えつつつ宇宙人と交信を試みているグループがいた。
今回のぼったR子の話によれば、
「白人のおばちゃんがものすごいエビぞりをしていた」
らしい。
ミステリアスなピラミッド、私達の夢のピラミッドは、オカルトの聖地でもあるのだ。
飛行機の関係で、この日だけはハードスケジュールを免れない。
朝はなんと2時半起き!
6時のフライトでルクソールへ飛ぶ。
いざ、王家の谷へ!
さて、歩けないU子にはバスの乗り降りひとつにしても抱っこしてくれる男性が必要なため、この3日目以降はエジプト人男性を雇っていた。
アフマド君という若者だ。
介助についてはまったくの素人ながら、一生懸命はたらいてくれた。
彼がいなければルクソールでは何も観られなかっただろう。
王家の谷へ入るには「タフタフ」と呼ばれるチューチュートレインに乗らなければならないし、
遺跡の中は例外なくガタガタなものだし、
それになにしろツタンカーメンの墓ときたら!
洞窟のように狭くて急な長い階段をずーっと降りていかなければならないのだ。
私は2年前に下見に来たときに
「U子には無理だろう」
とあきらめていた。
ところが、こここそアフマド君の本領発揮だ。
U子をひょいと担ぎあげ、そのものすごい階段を、抱っこしたまま降りてくれた。
・・・見ててハラハラしたけどな。
一番奥の玄室に着くと、私はアフマド君と交替してU子を木の手すりにもたせかけた。
美しい壁画が描かれた下に、大きな石棺が横たわっている。
「この棺の下にツタンカーメンのミイラが眠ってるんだよ」
と言うと、U子はニンマリ笑った。
ニンマリと。
ただ一度だけ。
このときすでに、U子は体調を崩していたのだ。
だいぶ具合が悪かった。
墓から出てきた時にはオシリス神のように顔が真っ青になっていた。
さては早起きをして疲れたか。
階段で緊張しすぎたのか。
それとも、これがツタンカーメンの呪いというやつか!?
・・・なんて、冗談を言える雰囲気ではない。
それほどU子の状態は悪かった。
予定していたハトシェプスト神殿の観光を延期にして、昼前だというのにホテルへ入り、午後はひたすら眠らせた。
朝はなんと2時半起き!
6時のフライトでルクソールへ飛ぶ。
いざ、王家の谷へ!
さて、歩けないU子にはバスの乗り降りひとつにしても抱っこしてくれる男性が必要なため、この3日目以降はエジプト人男性を雇っていた。
アフマド君という若者だ。
介助についてはまったくの素人ながら、一生懸命はたらいてくれた。
彼がいなければルクソールでは何も観られなかっただろう。
王家の谷へ入るには「タフタフ」と呼ばれるチューチュートレインに乗らなければならないし、
遺跡の中は例外なくガタガタなものだし、
それになにしろツタンカーメンの墓ときたら!
洞窟のように狭くて急な長い階段をずーっと降りていかなければならないのだ。
私は2年前に下見に来たときに
「U子には無理だろう」
とあきらめていた。
ところが、こここそアフマド君の本領発揮だ。
U子をひょいと担ぎあげ、そのものすごい階段を、抱っこしたまま降りてくれた。
・・・見ててハラハラしたけどな。
一番奥の玄室に着くと、私はアフマド君と交替してU子を木の手すりにもたせかけた。
美しい壁画が描かれた下に、大きな石棺が横たわっている。
「この棺の下にツタンカーメンのミイラが眠ってるんだよ」
と言うと、U子はニンマリ笑った。
ニンマリと。
ただ一度だけ。
このときすでに、U子は体調を崩していたのだ。
だいぶ具合が悪かった。
墓から出てきた時にはオシリス神のように顔が真っ青になっていた。
さては早起きをして疲れたか。
階段で緊張しすぎたのか。
それとも、これがツタンカーメンの呪いというやつか!?
・・・なんて、冗談を言える雰囲気ではない。
それほどU子の状態は悪かった。
予定していたハトシェプスト神殿の観光を延期にして、昼前だというのにホテルへ入り、午後はひたすら眠らせた。
エジプトへ行くにあたって、4才の椿にはいろいろと教えこんでいた。
ピラミッド。
スフィンクス。
アヌビス神。
アテン神。
それからもちろん、ツタンカーメン。
だが椿の一番に気に入ったものは「ミイラ」だった。
図書館で借りた絵本に

ミイラの作り方が詳細に描かれていたのである。
死者の内臓を取り出し・・・
遺体を塩漬けにしたあと包帯で巻き・・・。
教育上どうなのよ、ミイラの作り方って。
ちゃんと理解していたとは思えないが、
どういうわけか、うちの4才児はミイラにはまってしまったのだ。
「今日はミイラ見るの?」
「明日はミイラ見るの?」
「ミイラは?」
「ミイラは?」
「これミイラになっちゃうの?」
ミイラに憧れる4才児って、どうなのよ。
ルクソール博物館ではとうとう本物のミイラに会えることになり。
「椿、おいで! ミイラだよ!」
呼べば走っていく椿。
母親に抱きあげられて、ついに!
憧れのミイラとご対面!
「ほら、どう? 本物のミイラ!」
「こーわーいー!」
わんわん泣き出して、すこし、ほっとした。
こうして椿のミイラブームは終わった。
ピラミッド。
スフィンクス。
アヌビス神。
アテン神。
それからもちろん、ツタンカーメン。
だが椿の一番に気に入ったものは「ミイラ」だった。
図書館で借りた絵本に
ミイラの作り方が詳細に描かれていたのである。
死者の内臓を取り出し・・・
遺体を塩漬けにしたあと包帯で巻き・・・。
教育上どうなのよ、ミイラの作り方って。
ちゃんと理解していたとは思えないが、
どういうわけか、うちの4才児はミイラにはまってしまったのだ。
「今日はミイラ見るの?」
「明日はミイラ見るの?」
「ミイラは?」
「ミイラは?」
「これミイラになっちゃうの?」
ミイラに憧れる4才児って、どうなのよ。
ルクソール博物館ではとうとう本物のミイラに会えることになり。
「椿、おいで! ミイラだよ!」
呼べば走っていく椿。
母親に抱きあげられて、ついに!
憧れのミイラとご対面!
「ほら、どう? 本物のミイラ!」
「こーわーいー!」
わんわん泣き出して、すこし、ほっとした。
こうして椿のミイラブームは終わった。



